株式会社プロセス・ラボ
レポート・コラム

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[仕事の流れを「見える化」する
第5回:業務フローチャートの利用法

最終回となる今回は、まとめとして、従来の業務フローチャートが抱えていた課題を克服した新発想の業務フローチャート(注)のメリットと、それを実際のビジネスの場でどのように活用していくのかについて、解説していきましょう。

(注)新発想の業務フローチャートは、株式会社プロセス・ラボが独自に開発した手法で、プロラボ・メソッドといいます。以下、本文では、その略称として「PLメソッド」と呼びます。

●業務フローチャートの課題の克服
これまで見てきたように、業務フローチャートには従来

(1) 業務バリエーション(例外処理)をすべて盛り込むことが難しい
(2) 業務フローチャートの構成要素である作業をどの程度の大きさ(粒度)がまちまち

という2つの課題があり、これが業務フローチャートの作成や応用を難しくしてきました。

しかし、PLメソッドは、「誰が」と「何をどうする」とを分離して2つの点から作業を表すという発想の転換により、「多くの業務バリエーションを、どのように業務フローチャート上に反映させるのか」という課題に答えることができました。また、作業を「媒体上で行う情報の加工」と定義することにより、作業を特定し、その粒度をそろえることが可能となったのです。

●作成時間の短縮化
実は、PLメソッドのメリットは、従来の課題を克服しただけにはとどまりません。従来の手法に比べ、作成時間を大幅に短縮することができるのです。

従来の手法を使いこなすには、描画に使用するソフトウェア、記述ルールに関する知識や技能が必要になることから、「大部分の現場の担当者」にとっては簡単にできるものではありませんでした。そのため、多くの企業が、業務フローチャートを作成するのはコンサルタントなど手法に熟練した人に任せて、その人たちが現場の担当者からヒアリングするという進め方を採用してきました。

一般的に、コンサルタントなどがヒアリングをして業務フローチャートを作成するのは、「値段は高いが早い」と考えられがちですが、実際はどうでしょうか? 前提条件を変えて、もしも、現場の担当者でも使いこなせる手法を取り入れ、現場の担当者自身が業務フローチャートを作成できるとしたら、どうでしょう。 実はコンサルタントに任せるのは、現場の言葉を翻訳するという手間を掛けていることになり、決して早くはないのです(値段が高いことは間違いありませんが)。

作成作業の二度手間もあります。実際には、一度のヒアリングで、モレや誤解がなく、実態を把握できることはまずありません。業務フローチャートができた後、それを見て初めてモレや誤解が分かることも多いのですが、従来の描画主体の手法では、小さな修正がその部分以外にも影響を与え、修正事態の手間が想像以上に大きくなりがちです。

その点、PLメソッドは、「誰が」「何を」「どうする」という定義された作業を機械的に積み上げていくことでできるため、現場の人でも簡単に習得することが可能です。コンサルタントのような特殊な技能を持った人を介することがなく、現場の担当者自身で作成できるため、実は想像以上に早く作成できるのです。しかも、作ったものを見て、自分でモレや勘違いに気付いて修正するのも簡単で、試行錯誤しながら完成度を上げることができます。

実際に、PLメソッドに基づく業務フローチャート作成は、すでに業務改善や日本版SOX法対応に適用され始めており、通常の半分以下の時間で作成できることが、株式会社プロセス・ラボのコンサルティング実績からわかっています。

●業務改善への応用
業務フローチャートの目的は、現状業務の把握、つまり業務プロセスの可視化です。では、PLメソッドでモレや誤解のない完成度の高い業務フローチャートが作成できたら、それをどのように業務改善へ応用すればよいのでしょうか。

業務改善とは、業務プロセスの品質向上、スピードアップ、コストダウンを達成することです。つまり、「改善」といえるかどうかは、品質、時間、コストの3つの切り口で判定します。品質は、顧客満足や法令順守、業務自体の正確性と、目的によってその具体的な中身が変わりますが、早くて安いことは常に要求されます。

PLメソッドで書かれた業務フローチャートは、この3つの切り口から課題をとらえることを容易にしてくれます。前回までに紹介してきたPLメソッドによる業務フローチャートを利用しながら、課題の認識をパターン化して考えていきましょう。

図9:時間の要素を加えた新発想の業務フローチャート
時間の要素を加えた新発想の業務フローチャート
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●改善課題認識のための着眼点
上の図は、第4回で登場した業務フローチャートです。この例はシンプルなので業務改善の余地はありませんが、業務改善のための課題を認識するきっかけをつかむには、どのような視点で見るべきかを考えてみましょう。

■時間と作業を見る

  • ・作業の連なりが長い

    作業自体の数が多いと、最終アウトプットまでの業務プロセスの所要時間が長い可能性が高く、時間のスイムレーンと比較対照すると、問題のありそうな作業を特定しやすい

  • ・例外処理が多い

    業務が標準化されておらず、不要な作業が発生している可能性がある

■担当者を見る

  • ・作業が複数の担当者間を行ったり来たりしている

    「いった、いわない」の伝達ミスや、コミュニケーションの無駄が発生している可能性がある

  • ・1人の担当者に多くの作業が集中している

    分割して並列処理することで、業務における最終アウトプット完成までの所要時間を短くできる可能性がある。また、多くの作業がブラックボックス化し、代替が難しくなっていることが考えられる。さらに、その結果として、複数の担当者で分担して相互にチェックすべきことが、ノーチェックになっている可能性がある

  • ・担当欄に出てくる人数が多い

    コミュニケーションの無駄が発生していたり、待ち時間が多くなっている可能性がある

  • ・担当欄に出てくる人数が少ない

    一連の業務プロセスの中でも、通常は作業により難易度の差がある。実際に難易度の差があるにもかかわらず、担当者が少ないとすれば、簡単な作業を能力の高い人が行っている可能性がある

■媒体を見る

  • ・紙の媒体が利用されている

    転記ミス、検索の不便さ、保管スペースの無駄などが発生している可能性がある

  • ・Excelなどの表計算ソフトが利用されている

    表計算ソフトは、リレーショナル・データベースと違い、複数の担当者が同時に利用することができないため、業務における最終アウトプット完成までの所要時間が長くなっている可能性がある。また、修正履歴を残さず容易に変更できるため、ミスの発生原因にもなりうる

  • ・同一種類で似た名前の媒体がある

    本来まとめられる作業を複数に分けて行っている可能性がある

  • ・媒体数が多い

    無駄な転記がされている可能性がある

  • ・作成された後に、参照されていない媒体がある

    不要なものを作成している可能性がある

■動作を見る

  • ・確認が多い

    自動化・IT化されていないために、無駄な転記作業が多い可能性がある

  • ・1つの媒体が何度も参照されている

    一度で行える作業が複数回に分割されている可能性がある

  • ・照合が多い

    無駄な照合がある可能性がある

●業務プロセス可視化の効果
このように個々の着眼点だけでなく、業務フローチャートを利用して一連の業務プロセスの全体像を見ることにより、作業の位置付けを理解したうえで、プロセス全体で最適になるような課題の認識・解決ができるというメリットがうまれます。つまり、個別対応で部分最適を図ることにより発生するロスを避けることができるのです。

特に多くの担当者や複数の部署を横断する業務プロセスの場合、一連の業務プロセスの全体像が共有されていないと、各担当者・部署で業務「改善」をしたつもりが、全体では業務の有効性・効率性を損なっていた、といった事態が起こりかねません。

一連の業務プロセスが業務フローチャートによって可視化され、共有されていると、各担当者・部署が担当範囲以外の全体の業務を意識して、日常業務の運用や改善をしやすくなります。つまり、属人的な能力に依存することなく、組織的に課題認識・解決する力が高められるのです。

●さいごに
これまで5回にわたり、『仕事の流れを「見える化」する』というタイトルで連載してきました。最後に、「業務プロセスの可視化」という本質を踏まえて、PLメソッドにより作成された業務フローチャートは、 業務改善や業務マニュアル、日本版SOX法対応、ワークシェアリング導入などの用途に幅広く活用することができ、「厄介モノ」ではない、業務に役立つ画期的なツールになる、ということをお伝えして、この連載を終わりにしたいと思います。

なお、本連載の内容についてのお問い合わせやPLメソッドの導入支援は、株式会社プロセス・ラボのホームページでも受け付けています。


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コラム情報

様々なビジネスシーンで活用される「業務フローチャート」ですが、業務フローチャートを正しく活用できているでしょうか?作成にばかり手間を取られ、肝心の業務フローチャート活用にはあまり時間を掛けていない。こんな状況ではないでしょうか。本コラムでは真の意味で業務フローチャートを使いこなす方法を松浦剛志氏に解説いただきます。